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矯正用アンカースクリューを用いた治療とは

矯正治療をもっと効率化

TAD(temporary anchorage devices)は、歯の近くのあご骨の表面に装着されるピアス状やプレート状の装置で、矯正治療において固定源として利用されます。様々な種類のTADが開発されており、治療目標に応じて適切なタイプを選択する必要があります。一部の患者にはTADが必要ない場合もあるため、矯正治療の目標に合わせて適切な選択を行うことが重要です。

最新の矯正診断や治療法では、従来困難とされていた方向への歯の移動や歯列の改善が効率的に行われるようになっています。これにより、従来の治療法では限界とされていた領域においても大幅な進歩が見られ、高品質な治療が提供されるようになっています。
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出っ歯の治療で

出っ歯の方において、TADの併用により適切な骨格に合った位置に歯を移動させることが可能です。上の前歯を効率的に後退させることができ、歯の抜歯を回避する患者さんも増えています。このような治療により、美しい口元が早期に実現し、かみ合わせも改善されることが可能となっています。

ガミースマイルの治療で

TADを併用して、ガミースマイルの改善に効果的な治療が可能です。上の前歯を上方に移動させることで歯ぐきの露出が改善され、ガミースマイルを治すことが可能となります。ガミースマイルの原因や治療法は個人によって異なるため、初診時にはご相談いただくことが重要です。

TADの大きく変わったこと

1. 矯正治療の効果が大幅に向上

従来の治療よりも、歯の移動制限が少なくなり、最適な治療結果を得ることが可能です。

2. 永久歯の抜歯回避が可能

今まで抜歯が必要とされていた方でも、抜歯を回避しながら歯並びを改善することができます。(※ただし、全ての方が非抜歯治療できるとは限りません。初診時にご相談ください。)

3. 違和感の少ない矯正装置

従来のような頭部に装着するへッドギアや口の裏側に取り付ける矯正装置が不要となり、見た目や違和感の面で改善が見られます。

4. 外科手術回避が可能

以前は必要とされていた外科手術を回避することが可能となりました。

5. 外科手術の簡素化

外科手術の範囲を縮小したり、治療を簡素化することが可能となりました。
TAD矯正法は、日本の矯正学会でもここ2、3年で注目されるようになりましたが、以前はほとんど議論されておらず、国内での教育機会も限られていました。2014年に薬事承認され、日本メーカーからTADが導入され始めたことで、日本の矯正界でも認知が広まりました。

しかし、TADを実際に使用し、効果を上げているのは、専門の矯正歯科医師の約20~30%程度と言われています。日本においてはTADの活用がまだ始まったばかりであり、普及にはまだまだ時間がかかるかもしれません。

ポイント①

TADやデンタルインプラントに関しては、現師匠や海外での研究を重ねており、ニューヨーク大学やインディアナ大学などで学びました。TADの国際特許の多くが韓国の矯正医によって取得されていることもあり、韓国でも研究を積んでいます。

TADとデンタルインプラントは異なる使用目的を持つものですが、生理学や病理学の観点からは同様に扱われます。そのため、TADだけでなくデンタルインプラント学も同時に学んできました。

ポイント②

過去成人矯正症例数約60%の方々が何らかのTADを使用していますが、歯並びの状態や治療計画によっては、TADが全く必要ない場合もあります。矯正診断の際に、TADの併用がメリットのある方や治療中に効果を感じられた方には、事前に説明や提案を行います。

TADのメリットとデメリットを理解した上で、TADの併用法を選択するかどうかを決定していただくことが重要です。医院側で強制的にTADを装着することはなく、患者様のご要望や状況に合わせて柔軟に対応いたします。お気軽にご相談ください。

ポイント③

TADの装着時には、ごく少量の歯科用部分麻酔が使用されます。歯の抜歯時の麻酔量と比較すると、約10分の1程度です。

ミニスクリュータイプのTADの装着は比較的短時間で行われ、左右に装着する場合でも約10分で終了します。装着時には痛みはほとんど感じず、若干の圧迫感が数十秒程度生じることがあります。装着後、麻酔が切れると違和感が生じますが、数日で消失します。その後、痛みはほとんど生じません。

ポイント④

矯正治療中は、矯正装置周囲のブラッシングが重要です。TADを装着している場合は、TAD周囲を丁寧にブラッシングしてください。正確なお手入れが怠られると、TAD周囲の歯ぐきにばい菌が蓄積し、インプラント周囲炎を引き起こす可能性があります。炎症が生じると歯ぐきが赤くなり、触れると痛みを感じることがあります。

炎症が生じた場合は、こまめに汚れを取り除き、ブラッシングを続けることで炎症が改善されます。

ポイント⑤

TADは治療終了時や目的達成後に除去されます。除去には、装着時間よりもさらに短い時間がかかり、一本につき数十秒で除去されます。除去後は、わずかな傷口ができますが、数日で歯ぐきの表面の傷は治癒します。その後は特に特別なケアは必要ありません。

ポイント⑥

TADは、治療終了時や目的を果たした後に除去されます。除去には、装着時間よりもさらに短い時間がかかり、一本につき数十秒で除去されます。除去後は、わずかな傷口ができますが、数日で歯ぐきの表面の傷は治癒します。その後は特に特別なケアは必要ありません。

メリット:
- 複数の歯をまとめてもしくは選択的に移動することができ、治療効率が向上します。
- 限界とされていた方向への移動が可能になり、治療結果が向上します。
- 顎手術を必要としない治療が可能になり、治療の選択肢が広がります。
- 歯の抜歯を回避することができます。

デメリット:
- TAD周囲の歯ブラシがおろそかになると歯肉炎になる可能性があるため、矯正装置の清掃と同様にブラッシングを行う必要があります。
- あごの骨の硬さや年齢によって、緩みが生じることがある場合があります。この場合、締め直しを行うこともあります。

ポイント⑦

TADを使用した矯正治療により、歯の移動効率が向上し、特定の歯のみを効果的に移動させることが可能となります。しかし、TADを併用しても、治療期間が短縮されるかどうかについては、いくつかの要素が関係します。

TADを使用した矯正治療において、治療期間の短縮が期待される理由としては、歯の移動効率が向上し、特定の歯のみを効果的に移動できること、困難とされていた歯の移動が可能となること、歯の抜歯を回避できることなどが挙げられます。しかし、治療期間の短縮が確実に期待できるわけではありません。

矯正治療の期間を短縮するためには、適切な治療計画、TADの効果的な使用、歯の速やかな移動、患者様の協力が必要です。そのため、TADを使用したからといって、単純に治療期間が短縮されるわけではなく、矯正治療の質や効率が向上することが期待されます。治療期間の短縮には、様々な要素が組み合わさって成り立つことを理解していただきたいです。